リソウのセイカツ

休日。
朝、思い立って文旦のような果実を剥く。
文旦よりも一回りほど小さいそれの皮は驚くほど分厚く、爪では歯が立たないので放射線状にナイフの切れ目をいれる。皮を剥くと、さらに文旦よりふたまわりほど小さい。

一般的な薄皮よりもよほど厚みのある薄皮を剥けば種がある。小さな実のひとかたまりに平気で二三、ごろごろと。剥き終わればあまりにも小さな収穫。
果実はなにも、人に食べられるためにあるわけではないのだ。そんなようなことを思って、朝から不思議な心持ちがする。
なんとなく、小さな頃に、壁の隅を見つめながら宇宙の途方もない大きいことを思って、重力を失った心地になった感覚と似ている。

朝食を買いに近くのパン屋さんに。
売る本、持っていく本の選別。

二人してだらだらと過ごしながら、何かと足の踏み場のない家で、進行役のいない引っ越し準備。